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デジタルトランスフォーメーション

曖昧さを排除するシステム要件定義の実践

公開日

2024.12.04

更新日

2024.12.04

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曖昧さを排除するシステム要件定義の実践のサムネイル

システム開発における曖昧な要件の影響

システム開発プロジェクトの失敗要因の多くは、要件定義の不備に起因します。特に言葉の曖昧さは、プロジェクトメンバー間の誤解や期待の不一致を引き起こし、結果として工数超過や品質低下をもたらします。例えば、「迅速な応答」という要件は、誰にとって迅速であるべきかが明確でないため、解釈の違いが生じます。このような曖昧な要件が放置されると、プロジェクト全体にリスクが波及するのです。

明確な要件を定義するための基本原則

明確な要件定義を行うには、以下の原則を理解し、適用することが重要です。

明確な要件定義は、プロジェクト成功の礎となる作業です。要件の曖昧さを排除し、関係者全員が同じ理解を共有するためには、いくつかの基本原則を遵守する必要があります。以下にその具体的なポイントを説明します。

まず、要件は具体性を持たせることが最も重要です。「効率的」「迅速」などの抽象的な表現では、解釈に幅が生じ、チーム間の混乱を招く恐れがあります。たとえば、「迅速な応答」を「ユーザーの入力操作後、1秒以内にレスポンスを返す」といった具体的な表現にすることで、解釈の余地を排除できます。

次に、要件は測定可能であるべきです。測定可能な基準がない場合、プロジェクト完了時にその要件が満たされているかどうかを判断できません。たとえば、「サービスの利用者満足度を向上させる」という目標を「サービス満足度調査で90%以上の肯定的な回答を得る」と定義することで、成功の度合いを客観的に評価できます。

また、要件は達成可能である必要があります。無理な目標を設定すると、開発チームに過度な負担がかかり、士気低下や失敗のリスクを引き起こします。達成可能性を確保するためには、技術的制約やリソースの現実を踏まえた要件設定が不可欠です。

関連性のある要件を明確にすることも重要です。すべての要件がプロジェクトの目的と整合性を持ち、不要な要件が含まれていないことを確認してください。これにより、開発リソースの効率的な配分が可能になります。

最後に、要件は期限を明確に設定すべきです。期限が不明確な場合、優先順位付けが困難になり、開発プロセスが非効率になる可能性があります。たとえば、「システムの新機能を早期に実装する」という表現を「3月末までに新機能をリリースする」と具体化することで、チーム全体が同じスケジュール感を共有できます。

これらの原則を遵守することで、プロジェクトの方向性が明確になり、要件に対する全員の認識が一致します。明確で合意形成された要件を基盤にすることで、プロジェクトの成功確率を大幅に向上させることが可能です。

要件表現の具体的手法とテンプレート

要件定義において、言葉の曖昧さを排除するには、適切な表現手法とテンプレートを活用することが重要です。これにより、関係者間で共通の理解を確立し、誤解を最小限に抑えることができます。以下に、具体的な手法とそれに関連するテンプレートを詳しく解説します。

ユースケース記述

ユースケース記述は、システムが提供する機能を具体的な利用シナリオとして表現する方法です。この手法では、以下のような項目をテンプレートとして記載します。

項目 説明
ユースケース名 シナリオの名称 商品検索
アクター ユースケースに関与するユーザーやシステム 顧客、在庫管理システム
前提条件 ユースケースが実行される前に満たすべき条件 ユーザーがログインしている
基本フロー アクターとシステム間の主な手順 ユーザーが検索バーにキーワードを入力し、システムが結果を表示する
代替フロー 基本フロー以外の例外的な手順 検索結果が0件の場合、システムが適切なメッセージを表示する

このように構造化された記述によって、具体的な動作と期待される結果が明確になり、関係者全員が理解しやすくなります。

ユーザーストーリー

ユーザーストーリーは、シンプルなフォーマットで要件を記述する手法です。次の形式が一般的です。

  • 形式: 「〇〇として、私は〇〇をしたい。それは〇〇だからだ」 例: 「顧客として、私は過去の注文履歴を確認したい。それは再注文を簡単にするためだ」

この手法は、ユーザー視点に立った要件を簡潔に記述できるため、ステークホルダーが要件を容易に理解できます。また、優先度付けや実装の計画を立てる際にも役立ちます。

シナリオ分析

シナリオ分析は、業務プロセスを具体的なシナリオとして記述することで、システム要件を抽出する方法です。この手法では、以下のようなテンプレートを使用します。

項目 説明
シナリオ名 分析する業務シナリオの名称 商品返品プロセス
現状の問題 現在のプロセスで解決すべき課題 返品処理が手動で時間がかかる
目標 システムで達成すべき目標 返品処理の自動化と効率化
プロセスフロー 現在のプロセスと、改善後のフローを図や文章で記載 手作業からバーコードスキャンを利用した処理への移行

シナリオ分析を通じて、現場の課題を深く理解し、具体的な改善案を要件に反映させることが可能です。

要件文書テンプレートの活用

要件を正確に表現するためには、要件文書テンプレートを活用することも有効です。以下の項目を含む構造化されたテンプレートが推奨されます。

項目 説明
要件ID 各要件にユニークなIDを付与してトラッキングを容易にする REQ-001
要件内容 要件を簡潔かつ具体的に記述する 商品詳細ページには商品名、価格、説明、画像を表示する
優先度 要件の重要度 高、中、低
ステークホルダー 要件に関連するステークホルダー マーケティング部、エンジニアリングチーム
受け入れ基準 要件が満たされていることを判断する基準 商品詳細ページが全ブラウザで正常に表示される

このテンプレートに基づいて要件を整理することで、ドキュメントの統一性が向上し、プロジェクト全体のスムーズな進行が期待できます。

プロトタイピング

プロトタイピングは、実際に動作するシステムの試作品を作成し、それを基に要件を洗練する方法です。視覚的なモデルを用いることで、ステークホルダー間の共通理解を深めることができます。たとえば、ワイヤーフレームやモックアップを作成し、システムの画面設計やユーザー体験を具体化します。この方法により、要件の曖昧さを減らし、設計段階での変更を最小限に抑えることが可能です。

具体的な要件定義サンプル

言葉の曖昧さを排除する要件定義がどのようにプロジェクトの成功に寄与するかを具体的に示すため、具体的なサンプルを以下に記載しました。

プロジェクト概要

プロジェクト名: ECサイトのカート機能改修プロジェクト
目的: 購入プロセスを効率化し、カート放棄率を15%削減する
背景: ユーザーのカート放棄が多発しており、特にモバイル端末からの購入完了率が低下していることが課題。既存のカート機能は、操作が直感的でなく、支払いプロセスも複雑だった。

ユースケース記述の活用

  • ユースケース名: 商品をカートに追加し、購入を完了する
  • アクター: モバイル端末を利用する一般ユーザー
  • 前提条件:
    • ユーザーはサイトにログイン済みである
    • 少なくとも1つの商品を閲覧している
  • 基本フロー:
    1. ユーザーが「カートに追加」ボタンをタップする
      • システムは選択した商品をカートに追加し、「カートに追加しました」と通知する
    2. ユーザーが「カートを見る」ボタンをタップする
      • システムはカート画面を表示する
      • カートには以下の情報が表示される: 商品名、価格、数量、合計金額
    3. ユーザーが「購入手続きに進む」をタップする
      • システムは支払い情報入力画面を表示する
    4. ユーザーが必要な情報を入力し、「注文を確定する」をタップする
      • システムは注文を登録し、確認画面を表示する

代替フローの設定

  • 代替フロー
    1. ユーザーが在庫切れの商品をカートに追加しようとした場合
      • システムは「現在在庫切れです」と通知し、代替品を提案する画面を表示する
    2. 支払い情報が不完全な場合
      • システムはエラー通知を表示し、不足している情報を明示する

ユーザーストーリーの利用

  1. 「忙しいモバイルユーザーとして、私は商品をカートに素早く追加したい。それは無駄な時間を避けたいからだ。」
  2. 「サイト訪問者として、私はカート内の商品の合計金額を常に確認したい。それは購入を決断する助けになるからだ。」
  3. 「エコ意識の高い顧客として、環境に配慮した商品を簡単に見つけたい。それは価値観に合った買い物をしたいからだ。」

プロトタイプを活用した合意形成

  • 主要要素:
    • 商品名、価格、数量、サムネイル画像
    • 合計金額を画面上部に固定表示
    • 「購入手続きに進む」「カートを更新する」ボタンの配置
  • デザインガイドライン:
    • モバイル画面での直感的操作を重視したシンプルなレイアウト
    • カートの中身が明確に視覚化されるデザイン

まとめ

システム開発の成功は、言葉の曖昧さを排除した要件定義にかかっています。本記事で紹介した手法や原則を活用することで、明確で合意形成された要件を作り上げることが可能です。これにより、プロジェクトのリスクを低減し、効率的な開発プロセスを実現できるでしょう。

参考情報