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デジタルトランスフォーメーション

AIによる報告資料づくり改革:Devin・Claude Codeで情報収集、ChatGPT・VSCodeでプレゼン資料化

公開日

2025.06.26

更新日

2025.06.26

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AIによる報告資料づくり改革:Devin・Claude Codeで情報収集、ChatGPT・VSCodeでプレゼン資料化のサムネイル

はじめに。AIが業務を振り返る時代に

部門やプロダクトの成果を可視化し、社内に共有する。その重要性を理解しながらも、多くのマネージャーにとって、そのための情報収集や資料作成は、決して軽い負担ではない。

「今期、私たちは何を達成したのか?」「それはどんな改善をもたらしたのか?」。そうした問いに答えるには、日々の細かな活動に立ち戻り、点在するログやコミュニケーションを拾い上げていく必要がある。従来、その作業は担当者の記憶や手作業に委ねられてきた。

しかし、今は違う。AIを活用することで、GitHubや業務ログに記録された活動履歴から、一定の粒度で“振り返りの材料”を自動的に抽出し、整えてくれる時代が来ている。

実際に、全社の定例発表「全体会」の資料作成にあたり、AIによる実績抽出と資料構成を取り入れている。DevinやClaude CodeといったAIが過去の業務ログを分析し、ChatGPTが事業責任者視点での要約を組み立て、VSCode+Marpでスライドへと整形される。

本記事では、そのプロセスを追いながら、生成AIを用いた情報整理・発信の可能性を、実践例とともに紹介していく。単なる時短ではない、組織全体で“振り返りの再現性”を高める取り組みとして、マネジメント視点での活用価値に焦点を当てていく。

DevinとClaude Codeに業務を振り返ってもらう

資料作成の出発点は、事実の整理である。とはいえ、チームの実績を振り返るには、あまりに多くのログが散在している。GitHubに登録されたIssue、Pull Request、コミットメッセージ、マージ履歴。これらをすべて目で追うのは現実的ではない。

こうした課題を解決するのが、DevinやClaude Codeといった「コードを読めるAI」だ。これらはリポジトリ単位で分析できる能力を持ち、以下のような出力が可能である。

  • 4月以降にマージされた主なPull Requestの要点
  • 複数にまたがって取り組まれた大規模な機能開発の概要
  • 実装対象となったIssueと、それに紐づく開発内容
  • 改修が集中したディレクトリやコンポーネントの傾向

このような情報を得るには、適切な問い(プロンプト)を設計する必要がある。AIに対して“何を整理してほしいか”を明示することで、より正確なアウトプットが得られる。たとえば以下のようなプロンプトが有効だ。

  • 2025年4月以降の実績を報告したい。
  • 以下のGitHubリポジトリについて、過去のIssueやPRの履歴から、「どのような取り組みがあったか」「定量的に大きな成果があった項目」を中心に、サマリーとして3〜5項目に整理してください。

実際、開発チームで利用する際には、より技術的な観点も加えて以下のようにするのも良い。

  • 2025年4月以降の実績を報告したい。
  • 以下のGitHubリポジトリについて、Issue/コミットログ/PR履歴から大きめの機能改善、パフォーマンス向上、構造変更のような取り組みに注目し、定量的にわかる改善(例。Node数削減、表示速度向上など)を整理してください。可能であれば対象のモジュールやPR番号も併記してください。

こうしたプロンプトを使えば、DevinやClaude Codeは、自動的に「過去90日間で特に大きな改善があった箇所」「頻出した開発テーマ」「複数PRにまたがる大規模改修」などをグループ化して返してくれる。

実行結果は、そのまま「全体会で伝える実績トピック」の素材となる。さらに嬉しいのは、事業責任者本人がすべてを把握していなくても、こうした構造化された結果をもとに、あとから意味づけやストーリーを追加できる点だ。

つまりこのステップでは、「集める力」をAIに任せ、人は「語る視点」だけに集中できる。これにより、過去の自分の記憶やSlack履歴に頼らず、客観的かつ網羅的な成果整理が実現する。
実際にDevinやClaude Codeを両方ためしたのですが、個人的にはClaude Codeがやりやすかった印象。ともにこれからに期待。

ChatGPTでまとめて、語る内容を決める

情報が出揃ったあとに重要になるのは、「何を、誰に、どう伝えるか」を設計する工程だ。特に全体会のような社内発信では、様々なメンバーに発信が必要です。開発メンバーもいれば、営業、バックオフィス、経営陣もいる。そうした多様な受け手に向けて、自分たちの取り組みをどう語るかには工夫が要る。

そこで役立つのがChatGPTである。AIに素材を渡して文脈を構成してもらうことで、アウトプットは驚くほど滑らかになる。ただし重要なのは、素材をどう整理させ、どんな立場で語らせるかを、明確に指示することだ。

たとえば、以下のようなプロンプトを用いる。

  • 「以下の実績情報をもとに、全社員に向けて、事業責任者として語るようなサマリーを作成してください。事業の進捗、注力ポイント、顧客への提供価値が伝わるようにしてください。」

この一文を追加するだけで、単なる箇条書きの報告から、「何が戦略的に意味を持ったのか」「どう変化をつくったのか」といった語りへと進化する。ChatGPTは、技術的な成果を咀嚼しながら、経営や組織への波及を意識した文脈を作ってくれる。

プロンプトをさらに調整することで、細かなニュアンスにも対応できる。たとえば。

  • 「抽象的すぎないように、具体的な数値や実施内容を交えてください」
  • 「1スライドに収まるボリュームで箇条書きにしてください」
  • 「関係のない改善は省いてください」
  • 「この4つのトピックだけに限定して話してください」

このようにChatGPTを“社内広報編集者”のように扱うことで、素材に込めた意図が明確に伝わる文章が出来上がる。

一方で、生成された文章が常に的確とは限らない。ノイズも混じるし、語調が統一されていなかったり、重要でない要素が強調されていることもある。そうしたときは以下のように対応する。

  • 不要な情報を手で削る
  • 再プロンプトで視点やフォーマットを変える
  • 自分で語り直したい箇所はChatGPTを補助的に使う

重要なのは、人間が“伝えたい軸”を握ったまま、AIに下書きさせる構造を保つことだ。事業責任者として発信する文章は、「何を伝えたいか」と「どう受け取られたいか」の掛け算で成り立つ。その骨格は人が持ち、肉付けはAIに任せる。

こうして生まれた文章は、資料化フェーズにおいてMarp形式のスライドに変換されるが、その前段階で、語るべきことが1枚にまとまっていることは極めて重要だ。ChatGPTによる「構成支援」は、もはや文章生成以上の役割を担っている。

VSCodeでスライド資料(Marp)を整える:構造とデザインの両立

AIで文章が整ったら、それを“発信できるかたち”に仕上げる工程が待っている。ここで重要になるのが、構造を保ったままスライド資料に落とし込むという視点だ。ただ整形するのではなく、「どの情報をどう配置すれば、社内の誰にとっても理解しやすいか」を意識する必要がある。

私が活用しているのが、「Marp」と「VSCode」の組み合わせである。MarpはMarkdown形式でスライドが書けるツールで、テキストベースでスライドを構成できる。VSCodeとMarp拡張を使えば、リアルタイムプレビューで見た目を確認しながら、即座にPDF化まで行える。

ChatGPTを資料整形の“初期案生成ツール”として活用するには、次のようなプロンプトが効果的だ。

  • 「以下の内容をMarp形式でスライド化してください。スライドの枚数が多くなってもいいので、1枚ごとの情報量が適切になるようにしてください。」

この一文を添えることで、「1枚に詰め込む」のではなく「分かりやすく伝える」方向に構成がシフトする。さらに、以下のような具体指示も有効だ。

  • 「この箇条書きを表形式にしてください」
  • 「見出しごとにスライドを分けてください」
  • 「このセクションは1枚で要約してください」

編集作業そのものは基本的にVSCode上で行う。プレビューを見ながら、「どのスライドが重いか」「見出しと内容が合っているか」を手で調整する。

そして、資料としての印象を決めるのがデザイン要素だ。以下のような指示をChatGPTに出すことで、ブランディングと統一感を演出している。

  • 「{サービスのURL} のスタイルを参考に、背景をブルーのグラデーションにしてください」
  • 「ロゴを右上に配置してください。」
  • 「配置したロゴを2倍の大きさにしてください」

これにより、単なるMarkdownの羅列ではなく、視認性とデザイン性を両立したスライドが完成する。AIはCSSやSVGの扱いにも長けているため、フォントの大きさや色調整といった修正依頼にも柔軟に対応できる。

最後は人の目で調整をかける。「1スライドに対する情報密度」「見た瞬間に伝わるか」「語りやすい流れになっているか」。こうした観点から仕上げを行い、PDFにエクスポートすれば、全体会で使えるレベルのプレゼン資料が完成する。

このプロセスは一度構築してしまえば繰り返し利用可能だ。ChatGPTが構造を整え、Marpがそれを視覚化し、VSCodeが出力を支える──人は“伝えるべきこと”に集中し、編集と設計はAIに分担させる。それが、発信の質とスピードを両立させる現代的なスタイルである。

まとめ

生成AIとエディタを活用することで、発表資料の作成は「手作業で積み上げるもの」から「情報を構造化して整えるプロセス」へと変わり始めている。

DevinやClaude CodeによるGitHubログの自動解析、ChatGPTによる語りの構築、そしてVSCodeとMarpによるスライド整形。この一連の流れは、個人の手間を減らすだけでなく、「組織としてどう振り返るか」「何を可視化すべきか」という問いに、新しい答えを提示している。従来、資料作成は属人的で、手間がかかり、情報の網羅性や表現の一貫性にもばらつきがあった。だが今や、AIを補助役としながら、記録から整理、発信までを再現性高く実行できる体制が現実になりつつある。このプロセスを導入することで、マネージャーは「記憶や感覚に頼らず、成果を構造として語る」ことが可能になる。

そして、発信という営みそのものが、チームの知識を共有可能な資産として残す行為へと変化する。発信のプロセスは、振り返りのプロセスでもある。生成AIとともに歩むことで、私たちはただ情報を伝えるだけでなく、「どう伝え、どう次につなげるか」の設計そのものを進化させている。この変化を一過性の技術的トレンドとして捉えるのではなく、組織的ナレッジの定着と発信力の強化につなげていくことが、次の一歩になるだろう。