
グローバル市場への進出は、今日のEコマース事業者にとって成長戦略の重要な部分となっています。多言語対応したショップサイトの構築は、国際的な顧客基盤の拡大において不可欠な要素です。本記事では、世界中で利用されているEコマースプラットフォーム「Shopify」を使用して、効果的に多言語サイトを構築・運用するための方法について詳しく解説します。技術的な実装から運用上の注意点まで、実践的な情報を提供し、グローバル展開を目指すショップオーナーの皆様をサポートします。
Shopifyにおける多言語対応の基本理解
Shopifyプラットフォームでの多言語対応は、事業のグローバル展開において極めて重要な要素です。多言語サイトを構築することで、異なる言語圏の顧客に母国語でショッピング体験を提供でき、コンバージョン率の向上や顧客満足度の増加につながります。Shopifyでは、複数の方法で多言語化を実現できますが、その前提として理解すべき重要な概念があります。
まずShopifyの多言語対応における基本的な仕組みを把握しましょう。Shopifyは本来、単一言語を基本としたプラットフォームであり、標準機能のみでの完全な多言語化には一定の制限があります。しかし、Shopifyが提供する言語サポート機能と、サードパーティのアプリやカスタマイズを組み合わせることで、高度な多言語サイトの構築が可能となります。
Shopifyにおける言語とは、ストアフロントで表示されるテキストの言語設定を指します。これには、ナビゲーションメニュー、商品説明、チェックアウトプロセスなどのユーザーインターフェース要素が含まれます。Shopifyの管理画面自体も複数の言語に対応していますが、これはストアフロントの言語設定とは別物であることを理解しておく必要があります。
多言語対応の重要性は、グローバル市場でのビジネス展開において明らかです。CSA Researchの調査によれば、消費者の76%は母国語でのショッピング体験を好み、約40%の消費者は自分の言語でサービスを提供しないサイトでは購入を躊躇するとされています。これは、適切な多言語対応が単なる利便性の向上だけでなく、ビジネス成長の鍵となることを示しています。
Shopifyでの多言語対応に取り組む前に、自社のターゲット市場と必要な言語を明確に特定することが重要です。全ての言語に対応するのではなく、ビジネス戦略に基づいて優先順位をつけるアプローチが効率的です。また、翻訳リソースの確保や、多言語サイト運用の継続的なメンテナンス体制についても、事前に計画を立てておくことが成功への道筋となります。
Shopify標準機能による多言語対応手法
Shopifyプラットフォームには、基本的な多言語機能が標準で組み込まれています。これらの機能を理解し活用することで、追加のアプリやカスタマイズなしでも一定レベルの多言語対応が可能となります。ここでは、Shopifyの標準機能を使った多言語対応の方法と、その利点・制限について詳細に解説します。
Shopifyの言語設定
Shopifyの標準機能による多言語対応の中心となるのが「言語」設定です。Shopify管理画面の「オンラインストア」セクション内にある「言語」設定から、ストアでサポートする言語を追加することができます。Shopifyは現在、20以上の言語をネイティブサポートしており、各言語のシステムテキスト(「カートに追加」ボタンや「チェックアウト」などのインターフェース要素)が自動的に翻訳されます。
言語を追加する際には、その言語をデフォルト言語として設定するか、追加言語として設定するかを選択できます。デフォルト言語は、ユーザーが明示的に言語を選択しない場合に表示される言語です。追加した各言語に対して、専用のURLが生成されます(例:mystore.com/ja、mystore.com/en)。これにより、言語ごとに異なるURLでアクセスが可能となります。
Shopifyの標準機能を使って、商品タイトル、説明文、コレクション名、ブログ記事などのコンテンツを複数言語で作成することができます。管理画面で言語を切り替えながら、各言語版のコンテンツを入力していきます。ただし、この作業は手動で行う必要があり、大量の商品やコンテンツがある場合は時間がかかる点に注意が必要です。
標準機能による多言語対応のメリットと課題
標準機能による多言語対応の最大の利点は、追加コストなしで実装できることです。また、Shopifyの公式サポート対象であるため、将来的なアップデートや互換性の問題が少ないという安心感があります。さらに、シンプルな多言語ニーズであれば、これらの機能だけで十分対応できる場合も多いでしょう。
一方で、標準機能には一定の制限もあります。まず、サポートされる言語は限定的です。また、翻訳作業は全て手動で行う必要があり、自動翻訳機能は提供されていません。さらに、テーマのカスタマイズ要素やメタデータなど、一部のコンテンツ要素は多言語対応が難しい場合があります。複雑な多言語要件や大規模なカタログを持つストアでは、標準機能だけでは不十分かもしれません。
実際の導入手順としては、まず管理画面から「オンラインストア」→「言語」へ進み、「言語を追加」ボタンをクリックします。サポートされている言語のリストから必要な言語を選択し、その言語のURLを設定します。次に、管理画面上部の言語セレクターを使って言語を切り替え、商品情報、コレクション、ページコンテンツなどを各言語で入力していきます。最後に、ストアフロントに言語切替メニューを追加するため、テーマエディターでメニューのカスタマイズを行います。
専用アプリを活用した高度な多言語対応
Shopifyの標準機能だけでは対応しきれない高度な多言語ニーズに対しては、Shopifyアプリストアで提供されている専用の多言語対応アプリを活用する方法が効果的です。これらのアプリを利用することで、より柔軟で機能的な多言語ストアの構築が可能になります。
多言語対応アプリの機能例
多言語対応アプリの主要な機能としては、まず自動翻訳機能が挙げられます。商品説明やブログ記事などのコンテンツを機械翻訳により自動的に複数言語に変換する機能は、大量のコンテンツを持つショップにとって大きな時間節約となります。もちろん、機械翻訳の精度には限界があるため、重要なコンテンツについては人間による翻訳や編集の機能も併せて利用することが推奨されます。
また、SEO対策機能も多言語対応アプリの重要な特徴です。言語ごとのメタタイトル、メタディスクリプション、URLなどを最適化することで、各言語版サイトの検索エンジン評価を高めることができます。hreflang属性の自動設定により、検索エンジンに対して適切な言語・地域情報を提供し、適切なユーザーに適切な言語版が表示されるようにすることが可能です。
言語検出・リダイレクト機能も便利な機能の一つです。訪問者のブラウザ言語設定やIPアドレスに基づいて最適な言語版サイトに自動的にリダイレクトすることで、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。また、通貨自動変換機能を備えたアプリもあり、言語だけでなく現地通貨での価格表示も可能になります。
多言語対応アプリの例
代表的な多言語対応アプリとしては、「Transcy」「Langify」「Weglot」「WOVN.io」「LangShop」などが挙げられます。これらのアプリはそれぞれ特徴が異なるため、自社の要件に最も適したものを選択することが重要です。例えば、Langifyは使いやすさとコスト効率の良さで知られ、小規模から中規模のストアに適しています。Weglotは高度な自動翻訳と人間による翻訳の組み合わせが強みで、品質重視のストアに向いています。
※関連記事:多言語対応と多通貨対応ができるShopifyの人気アプリ「Transcy」とは?
アプリ選択の際のポイントとしては、まず対応言語数が自社のニーズを満たしているかを確認することが重要です。また、翻訳方法(自動翻訳か手動翻訳か、またはその組み合わせか)、SEO機能の充実度、カスタマイズの柔軟性、価格体系なども重要な検討要素となります。さらに、ユーザーレビューやサポート品質も確認しておくと良いでしょう。
実際のアプリ導入手順としては、まずShopifyアプリストアから選択したアプリをインストールします。次に、アプリの指示に従って初期設定を行い、サポートする言語を選択します。その後、翻訳方法(自動翻訳を使用するか、手動で翻訳を入力するか)を設定し、必要に応じて翻訳内容の編集・調整を行います。最後に、言語切替UIをストアフロントに追加し、各言語版サイトのテストを実施して問題がないか確認します。
テーマカスタマイズによる多言語実装
より高度な多言語対応やShopifyアプリに依存しない独自の多言語機能を実装したい場合、Shopifyテーマのカスタマイズによるアプローチが選択肢となります。このセクションでは、Liquid(Shopifyのテンプレート言語)と JavaScript を活用した多言語実装の手法について解説します。
テーマカスタマイズによる多言語実装の基本原理は、翻訳テキストを言語ファイルとして管理し、ユーザーの言語選択に応じて適切なテキストを表示する仕組みを構築することです。これには主に2つのアプローチがあります。一つはShopifyの言語ファイル(Locales)を活用する方法、もう一つはJavaScriptベースの翻訳システムを実装する方法です。
Shopifyのテーマは、「locales」ディレクトリ内に言語ファイルを持っています。これらは.jsonファイル形式で、キーと値のペアとして翻訳テキストが保存されています。テーマのLiquidファイル内では「t」フィルタを使用してこれらの翻訳テキストを参照できます。例えば、「{{ 'products.product.add_to_cart' | t }}」のように記述することで、現在選択されている言語に応じたテキストが表示されます。
既存の言語ファイルを拡張して、サイト全体の翻訳テキストを管理することができます。テーマエディタの「言語」セクションから言語ファイルにアクセスし、新しい翻訳キーと値を追加することが可能です。あるいは、テーマコードを直接編集する場合は、localesディレクトリ内の各言語のjsonファイルを編集します。
より高度なカスタマイズとして、JavaScriptを使用した動的な翻訳システムを実装する方法もあります。この場合、翻訳テキストをJavaScriptオブジェクトとして定義し、ユーザーの言語選択に応じてDOM要素のテキストを動的に置き換えます。このアプローチは特に、商品データや動的に生成されるコンテンツの翻訳に有効です。
言語切替UIの実装は、テーマカスタマイズの重要な部分です。通常、ヘッダーやフッターに言語選択メニューを配置します。このメニューには、各言語への切替リンクを含め、現在選択されている言語を視覚的に示すデザインを取り入れると良いでしょう。Liquidを使用して現在の言語を検出し、適切なUIを表示するコードを実装します。
多言語SEO対策としては、hreflang属性の実装が特に重要です。各言語版ページのhead部分に、関連する全ての言語版へのリンクとそれぞれの言語・地域情報を含むhreflangタグを追加します。これにより、検索エンジンは各言語版ページを適切に索引付けし、ユーザーの言語設定に基づいて最適なバージョンを表示することができます。
※関連記事:【Shopify Tips】多言語対応のECサイト向けにHreflangタグを設定したい
テーマカスタマイズによる多言語実装の具体的なコード例としては、以下のようなアプローチが考えられます。まず、Liquidテンプレートファイル(theme.liquid)のhead部分にhreflangタグを追加します。次に、ヘッダーテンプレート(header.liquid)に言語切替メニューを実装します。さらに、必要に応じてJavaScript(theme.js)で動的な翻訳機能を追加します。
テーマカスタマイズの利点は、完全にカスタマイズされた多言語機能を実現できることと、月額コストが発生しないことです。一方、実装には技術的な知識が必要であり、テーマアップデート時に互換性の問題が発生する可能性があるという課題もあります。また、大量のコンテンツがある場合、翻訳の管理が複雑になる点にも注意が必要です。
多言語ストア運用のベストプラクティス
多言語Shopifyストアを構築した後、効果的に運用し続けるためのベストプラクティスについて解説します。 適切な運用戦略は、多言語サイトの品質維持と継続的な改善に不可欠です。
翻訳品質の管理
多言語サイトを運営する上で最も重要な要素の一つが翻訳品質の管理です。機械翻訳を使用している場合、定期的に翻訳内容をレビューし、不自然な表現や誤訳がないかチェックすることが重要です。特に重要なページや頻繁にアクセスされるコンテンツは、ネイティブスピーカーによる翻訳レビューを行うことで、品質を確保することができます。翻訳の一貫性を保つために、言語ごとの用語集や翻訳ガイドラインを作成し、複数の翻訳者が関わる場合でも統一感のある表現を維持することが推奨されます。
翻訳ワークフローの効率化
新商品や新コンテンツを追加する際の翻訳ワークフローを効率化することも重要です。新しいコンテンツを追加する際には、まずデフォルト言語で作成し、その後各言語に翻訳するという順序を確立することで、作業の重複や混乱を防ぐことができます。大規模な更新や季節商品の追加など、翻訳量が多い場合には、計画的なスケジュールを立て、十分な時間を確保することが必要です。
言語ごとのマーケティング戦略の最適化
言語ごとのマーケティング戦略の最適化も検討すべき重要なポイントです。各言語圏の文化や消費者行動は異なるため、単に内容を翻訳するだけでなく、地域特性に合わせたマーケティングアプローチを取ることが効果的です。例えば、特定の地域の祝日やイベントに合わせたプロモーション、現地のソーシャルメディアプラットフォームの活用、地域特有の支払い方法の提供などが考えられます。
多言語SEOの最適化
多言語SEOの継続的な最適化も忘れてはならない要素です。各言語版サイトのパフォーマンスを定期的に分析し、キーワード戦略を最適化することが重要です。言語ごとに異なる検索トレンドやユーザー行動を理解し、それぞれに適したSEO戦略を展開することで、各言語でのオーガニック流入を最大化することができます。
※関連記事:【海外SEOの罠】Shopifyで多言語アプリを活用したサイトは要注意! | 世界へボカン駒村 × 世界へボカン徳田
カスタマーサポートの多言語対応
カスタマーサポートの多言語対応も考慮すべき重要な側面です。多言語サイトを提供している場合、顧客は自分の言語でのサポートも期待するでしょう。全ての言語で同レベルのサポートを提供するのが理想的ですが、リソースに限りがある場合は、自動返信メッセージや知識ベースの翻訳、機械翻訳ツールの活用など、段階的なアプローチを取ることも検討できます。
多言語サイトのパフォーマンス監視と改善
多言語サイトのパフォーマンス監視と改善も継続的に行うべき活動です。Google Analyticsなどのツールで他言語圏からのトラフィック、コンバージョン率、離脱率などの指標を言語別に分析し、問題点を特定して改善することが重要です。言語ごとのユーザー行動の違いを理解し、それぞれに最適化したユーザー体験を提供することで、全体的なパフォーマンスを向上させることができます。
多言語ストア運用面の課題
多言語ストア運用における一般的な課題としては、翻訳の管理とスケジューリング、品質の一貫性の確保、各言語版サイトの同期(新機能や更新の反映)などが挙げられます。これらの課題に対処するためには、明確なプロセスとガイドラインを確立し、必要に応じて翻訳管理ツールを活用することが効果的です。また、多言語対応に関わるチームメンバー間のコミュニケーションを円滑にし、責任範囲を明確にすることも重要です。
まとめ
Shopifyを活用した多言語サイト構築は、グローバル市場へ展開するEコマース事業者にとって重要な戦略です。本記事では、Shopifyにおける多言語対応の基本概念から具体的な実装方法、効果的な運用に至るまで、包括的な情報を提供しました。
Shopify標準機能による基本的な多言語対応は、追加コストなしで実装できる利点がある一方、サポート言語の制限や手動での翻訳管理など、一定の制約も存在します。より高度な多言語ニーズに対しては、Langify、Weglotなどの専用アプリを活用することで、自動翻訳機能やSEO最適化などの付加価値を得ることができます。
テーマカスタマイズアプローチでは、ShopifyのLiquid言語とJavaScriptを活用して独自の多言語システムを構築することができます。この方法は高度なカスタマイズが可能ですが、技術的な知識が必要とされ、テーマアップデート時の互換性にも注意が必要です。
多言語ストアの効果的な運用においては、翻訳品質の管理、効率的な翻訳ワークフロー、言語ごとのマーケティング戦略の最適化、多言語SEOの継続的な改善などが重要なポイントとなります。各言語圏のユーザー行動を理解し、それぞれに最適化されたエクスペリエンスを提供することが成功の鍵となります。
グローバル市場での成功を目指すShopifyストアオーナーにとって、多言語対応は単なる技術的な課題ではなく、ビジネス戦略の重要な一部です。適切な多言語実装とその継続的な運用・最適化によって、異なる言語圏の顧客に魅力的なショッピング体験を提供し、国際的な成長を実現することができるでしょう。
計画、実装、そして運用の各段階で適切なアプローチを選択し、継続的に改善していくことが、多言語Shopifyストアの長期的な成功につながります。本記事が、皆様のグローバルEコマース戦略の一助となれば幸いです。
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