1. Top
  2. ブログ一覧
  3. 「Keep Problem Try (KPT)」でプロジェクトを成功に導く振り返り術

デジタルトランスフォーメーション

「Keep Problem Try (KPT)」でプロジェクトを成功に導く振り返り術

公開日

2024.11.29

「Keep Problem Try (KPT)」でプロジェクトを成功に導く振り返り術のサムネイル

「Keep Problem Try (KPT)」とは何か

プロジェクトやスプリントの振り返りは、チームの成長と改善を支える重要なプロセスです。その中でも、「Keep Problem Try (KPT)」はシンプルかつ効果的な手法として注目されています。

KPTは、「うまくいったこと (Keep)」「問題点 (Problem)」「次に試したいこと (Try)」の3つの要素に分けて振り返る方法です。この手法の利点は、課題の特定と改善策の実行可能性を明確にする点にあります。また、シンプルであるため、初めて振り返りを行うチームでも容易に取り組むことができます。

この手法はアジャイル開発の現場で広く活用されており、特にスクラムのスプリントレビューの一環として用いられることが多いです。プロジェクト終了後だけでなく、進行中の各フェーズでも実施できる柔軟性も備えています。

KPTが注目される理由

KPTがプロジェクト管理やアジャイル開発で注目される理由は、その実用性とチームの関与を促進する仕組みにあります。

多くの振り返り手法は複雑で、進行に熟練したファシリテーターを必要としますが、KPTは極めてシンプルです。このシンプルさは、スケジュールがタイトなチームや振り返りに不慣れなメンバーにも最適です。また、各メンバーが積極的に意見を出しやすい環境を作れるため、心理的安全性が高まります。

さらに、KPTは継続的改善に適しています。問題点を特定するだけでなく、具体的なアクションプラン(Try)を策定するプロセスを含むため、単なる反省に終わらず、実行可能な改善策を次のステップに繋げられます。

KPTの3つの構成要素

KPTを最大限に活用するためには、各要素が果たす役割を深く理解し、それぞれの目的に応じて適切に進行することが重要です。ここでは、3つの要素について具体的に説明します。

Keep: うまくいったこと

Keepでは、プロジェクトやチーム活動で効果を発揮した行動やプロセスを振り返ります。この要素の目的は、チーム全体が成功体験を共有し、その価値を再認識することです。たとえば、スケジュール管理が計画通りに進行した場合、その手法がどのように効果的であったかを記録します。また、情報共有ツールの活用がコミュニケーションを円滑にし、プロジェクト全体の効率向上に寄与したといった具体例も挙げられるでしょう。これらの成功要因を明確にすることで、チームの士気を高め、次回以降のプロジェクトでも同様の成果を再現する基盤を築くことができます。

具体的なデータや成果を共有することは、Keepを成功させる鍵です。たとえば、定例ミーティングの時間を短縮した結果、作業時間が増加し、効率が向上したといった事例を具体的な数値で説明することで、成功体験がさらに説得力を持ちます。これにより、継続すべき行動を全員が理解し、今後のプロジェクトでも効果を発揮できる可能性が高まります。

Problem: 改善すべきこと

Problemでは、プロジェクト中に発生した課題や障害を明確化します。この段階では、単に問題を洗い出すだけでなく、課題を建設的に捉え、次回への改善のヒントを見つけることが重要です。たとえば、チーム内の情報共有が不足していた場合、それがタスクの重複や遅延を引き起こした具体的な場面を振り返ることが必要です。また、技術的な課題として、使用したツールの処理能力が不足していた場合や、計画の立案段階でリソースが適切に配分されなかったことも課題として挙げられるでしょう。

問題点を特定する際には、具体的かつ測定可能な形で記録することが求められます。「コミュニケーションが不足していた」という抽象的な表現ではなく、「週次ミーティングで進捗状況が十分に共有されなかったため、タスクの依存関係が認識されなかった」という具体的な表現にすることで、課題解決の糸口を明確にできます。さらに、問題点を記録する際には、解決策の方向性も示唆する視点を取り入れることが望ましいです。

Try: 次に挑戦したいこと

Tryでは、Problemで特定した課題を解決するためのアクションプランを策定します。また、Keepで認識された成功要因をさらに強化するための新しい試みも含めます。この段階では、改善策が実際に実行可能であることを重視し、具体的な目標を設定します。たとえば、情報共有の改善を目指して、次回のプロジェクトで進捗確認ミーティングを週に2回実施するといった計画を立てることが考えられます。

さらに、アクションプランを効果的に実行するためには、SMARTフレームワーク(具体的で測定可能、達成可能で関連性があり、期限が設定されている目標)を活用することが有効です。たとえば、「翌月までに週1回の進捗確認ミーティングを実施し、全員が進捗を報告する」という目標を設定することで、チーム全体が具体的なゴールに向けて協力する意識を高めることができます。また、Tryの段階では、具体的な行動を共有するだけでなく、それがチームやプロジェクト全体にどのような効果をもたらすかを予測し、期待値を共有することも重要です。

KPTの3つの要素を適切に実施することで、チームは過去の成功と失敗をバランスよく振り返り、明確な目標を持って次のステップに進むことができます。このプロセスは、継続的な改善を促進し、チーム全体のパフォーマンス向上を支える基盤となります。

KPTを活用した振り返りプロセス

KPTを効果的に運用するためには、計画的な準備と進行が必要です。振り返りの目的を明確にし、実施手順を整理した上でチーム全員が積極的に参加できる環境を整えることが成功の鍵となります。

振り返りの準備

振り返りの準備は、成功する振り返りの基盤を築く重要なフェーズです。最初に取り組むべきは、振り返りの目的をチーム全員に共有することです。この振り返りでは何を達成したいのか、たとえば「プロジェクトの成功要因を確認する」「課題を明確化し、次回の改善に繋げる」といったゴールを設定します。明確な目的があることで、議論が散漫になることを防ぎ、全員が共通の方向性を持って取り組むことができます。

次に、必要な資料やツールを準備します。ホワイトボードやポストイット、オンラインツール(MiroやMuralなど)は効果的な選択肢です。これらのツールを活用することで、意見の可視化が可能になり、全員が議論の流れを把握しやすくなります。また、事前に議論のフレームワークを準備し、時間配分や進行手順を整理することで、スムーズな振り返りが期待できます。

さらに、意見を自由に表現できる環境を作ることが重要です。心理的安全性を確保するために、振り返りの冒頭で「失敗は学びの一部」と強調することで、メンバーが建設的に議論に参加しやすくなります。また、ファシリテーターが役割を担い、議論が特定の人に偏らないようバランスを取ることも重要です。

フォローアップ

振り返りが完了した後は、その結果をフォローアップするプロセスが欠かせません。振り返りで決定したアクションプランが実行に移されたかを定期的に確認し、その進捗をチーム全員で共有します。このフォローアップが継続的な改善の実現を支えます。

たとえば、Tryセクションで「新しいタスク管理ツールを導入する」というアクションプランが設定された場合、その導入が実際に効果を発揮しているかを確認するための評価基準を事前に設定することが重要です。また、次回の振り返りでは、前回設定したTryの成果を評価し、成功した点とさらなる改善点を議論します。このようにKPTのサイクルを継続的に回すことで、チーム全体のパフォーマンスを徐々に高めることができます。

フォローアップを効果的に進めるためには、記録の共有と振り返りの振り返りを行う文化を定着させることが必要です。すべてのメンバーがアクションプランの進捗を把握し、必要に応じて議論を再開できるようにすることで、KPTは単なる振り返り手法から、チームの成長を支える仕組みへと進化します。

まとめ

「Keep Problem Try (KPT)」は、シンプルながらも強力な振り返り手法として、チームの成長とプロジェクト成功に寄与します。この記事で紹介した手法やポイントを活用することで、振り返りの質を高め、実際の業務改善につなげることができます。今日からぜひKPTを試し、チームの改善プロセスを一歩前進させましょう。

参考情報

著者:乾 友輔 / Yusuke Inui
#要件管理