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価値の流れを可視化するバリューストリームマッピングの実践

公開日

2024.12.10

価値の流れを可視化するバリューストリームマッピングの実践のサムネイル

開発プロセスや業務フローにおいて、「なぜ価値のある成果がすぐに出ないのか」と感じたことはありませんか?バリューストリームマッピング(Value Stream Mapping)は、こうした課題を可視化し、改善の糸口を提供する有力な手法です。本記事では、バリューストリームマッピングの基本から具体的な実践方法までを解説します。価値の流れを理解し、最大化するための一歩を踏み出しましょう。

バリューストリームマッピングとは

バリューストリームマッピングは、製品やサービスが顧客に価値を提供するまでのプロセス全体を可視化する手法です。この手法は、プロセスにおける非効率やボトルネックを明らかにするために使用され、製造業やソフトウェア開発など多くの分野で採用されています。

バリューストリームの構成要素

バリューストリームは、大きく「価値を生み出す活動」と「価値を生み出さない活動」の2種類に分類されます。この分類は、プロセスのどの部分が顧客の期待を直接満たすか、またはどの部分がそれを阻害しているかを理解するうえで重要です。

活動の種類 説明 具体例 特徴
価値を生み出す活動 実際に顧客にとって価値を提供するプロセス 要件定義、設計、コーディング、テストなど 顧客が求める成果物やサービスを直接的に形成する
価値を生み出さない活動 ボトルネックや無駄として削減可能なプロセス 不要な待ち時間、非効率な承認手続き、エラー修正など 顧客に直接的な価値を提供しないため、最小化または排除の対象となる

バリューストリームマッピングの目的は、この2つの活動を明確に分離し、価値を生み出さない活動を特定して改善を図ることにあります。これにより、プロセス全体の効率化と顧客価値の最大化が可能となります。

主な目的

バリューストリームマッピングの目的は、次の3つに集約されます。

プロセス全体を俯瞰して理解する

バリューストリームマッピングでは、業務プロセス全体を可視化することで、どの部分が顧客価値の創出に寄与しているかを明確にします。これにより、プロセスの全貌を把握しやすくなり、無駄や重複を削減する基盤を作ることができます。

問題点や改善の余地を特定する

プロセスを詳細に分析することで、非効率な手順やボトルネックを明らかにし、それを改善するための具体的なアクションプランを策定できます。これにより、効率向上やコスト削減を実現します。

継続的な改善の指針を得る

一度の改善に留まらず、継続的にプロセスを最適化するためのガイドラインを提供します。これは、組織全体での学習と成長を促進し、持続可能な競争力の維持に繋がります。

バリューストリームマッピングの基本ステップ

バリューストリームマッピングを効果的に実践するには、いくつかの基本ステップを押さえる必要があります。

現状の理解

まずは、現行プロセスの全体像を詳細に把握します。価値が顧客に届けられるまでのプロセスを可能な限り正確に記録することが重要です。

分析項目 説明 具体例
プロセスの境界設定 開始点と終了点を明確に定義します 「顧客の要求を受け付ける」から「製品やサービスを納品する」までの一連の流れを定義します
データ収集 各ステップに要する時間(リードタイム)、作業時間(タッチタイム)、コストを記録します 無駄や遅延の原因を特定しやすくなります
ボトルネックの特定 特に時間がかかるステップや、価値を生み出さない活動がある部分を洗い出します 待ち時間やエラー修正などの非効率な部分を特定します

将来の状態の設計

次に、現状のプロセスを元に、理想的な状態を描きます。この設計段階では、価値を最大化し、無駄を最小化することを目指します。

改善アプローチ 説明 具体例
プロセスの簡略化 ボトルネックや非効率なステップを削減します 承認プロセスを自動化することで処理時間を短縮できます
新たなプロセスの導入 顧客価値を高めるために、新しい技術や方法論を取り入れます 継続的インテグレーション(CI)や自動化ツールの活用が挙げられます
可視化ツールの利用 改善後のフローを図示し、全体像を共有することで、関係者間の理解を深めます -

改善計画の実施

最後に、設計した将来の状態に向けた具体的な行動を起こします。

改善ステップ 説明 ポイント
優先順位の設定 改善のインパクトが大きい箇所を特定し、段階的に取り組む 最も時間がかかるステップを最初に改善する戦略を取る
アクションプランの作成 具体的な改善タスクとスケジュールを策定し、チームで共有 タスクには責任者と期限を明示する
フィードバックループの構築 改善後の結果を定期的にモニタリングし、必要に応じてプロセスを調整 関係者からのフィードバックを基に、新たな課題を洗い出す

実践におけるポイントと注意点

バリューストリームマッピングの実践には、いくつかのポイントと注意点があります。

チームでの協力

バリューストリームマッピングは、複数の部門が関与するプロセス全体を対象とするため、部門横断的な協力が不可欠です。チーム全員が同じ目標を共有し、透明性を持ってプロセスを評価する必要があります。具体的には、ワークショップを通じて現状のプロセスを共有し、全員が改善目標を明確に理解する場を設けることが効果的です。また、部門間の対立やコミュニケーションギャップを防ぐための信頼構築も重要です。

データの正確性

収集するデータの正確性は、バリューストリームマッピングの成功を左右します。具体的には、各プロセスのリードタイムやタッチタイム、発生コストなどのデータを正確に収集することが必要です。これを実現するためには、データ収集時に関係者全員の協力を得るとともに、自動化ツールや分析ツールを活用してデータの一貫性を確保することが有効です。不正確なデータに基づいた分析は、誤った改善策を招くリスクがあるため、細心の注意を払いましょう。

小さく始める

バリューストリームマッピングを活用した改善プロジェクトでは、大規模な変革を一度に行うのではなく、まずは小規模な取り組みから始めることをお勧めします。具体的には、最も影響の大きいプロセスや、改善が比較的容易な領域を優先的に取り上げると良いでしょう。小さな成功体験を積み重ねることで、チーム全体のモチベーションを高めるだけでなく、改善の効果を具体的に示すことができます。また、段階的な取り組みはリスクを分散し、必要に応じて柔軟に方針を調整する余地を持たせることにもつながります。

まとめ

バリューストリームマッピングは、プロセスの無駄を削減し、価値の流れを最適化するための強力なツールです。現状の把握から理想のプロセス設計、改善計画の実施まで、組織全体で取り組むことで、持続的な価値提供が可能になります。まずは小さく始め、成功体験を積み重ねながら、大きな成果を目指しましょう。

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