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EC:商品受注から出荷するまでの業務フロー(倉庫在庫、直送、予約販売、BOPIS)のサムネイル

EC:商品受注から出荷するまでの業務フロー(倉庫在庫、直送、予約販売、BOPIS)

ECサイトにおける受注から出荷までの各プロセスと、各配送パターン毎の利点や共通課題を整理します。

EC:商品受注から出荷するまでの業務フロー(倉庫在庫、直送、予約販売、BOPIS)のサムネイル

EC市場は、デジタルトランスフォーメーションの急速な進展に伴い、消費者の購買行動や物流の仕組みが大きく変化している。これまで一般的だった一元管理型の出荷プロセスに加え、直送、予約販売、BOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)といった多様な手法が広がり、それぞれの特性に応じた業務フローの最適化が求められている。
こうした異なる配送パターンの特徴を整理し、それぞれの業務プロセスがもたらす利点を明らかにする。

業務のフローを説明

 

注文受付と決済の確認

ECサイトにおける購買プロセスは、顧客が商品を選び、注文を確定することから始まる。注文が完了すると、システムは顧客の入力した情報をもとに、注文内容の確認と決済処理を実施する。

決済には、クレジットカード、銀行振込、電子マネー、後払いなど、さまざまな手段があり、ECサイト側はこれらの決済システムと連携することで、安全かつスムーズな処理を実現する。特に、クレジットカード決済の場合、不正利用の防止やリアルタイム認証が求められるため、外部の決済ゲートウェイを活用するケースが一般的だ。

決済が正常に完了すると、注文情報は次のステップである在庫確認や出荷準備へと引き継がれる。決済処理の精度が高ければ、注文の確定が迅速に行われ、結果として顧客への配送スピードも向上する。そのため、ECサイトの運営においては、決済システムの安定性やセキュリティ対策が重要なポイントとなる。

在庫確認のプロセス

注文が確定すると、次に行われるのが在庫確認のプロセスである。この工程では、注文された商品が倉庫や出店者の在庫に確保されているかをシステムがチェックし、適切な出荷指示を行う。

在庫管理の方法はECサイトの運営形態によって異なる。自社倉庫を持つ場合は、倉庫管理システム(WMS)と連携し、リアルタイムで在庫を更新しながら引当処理を行う。一方、出店者やメーカーからの直送モデルでは、外部の在庫システムとデータを連携させ、出店者側の在庫状況を即座に確認する必要がある。

在庫が確保できた場合は、次のステップである出荷準備へと進むが、在庫切れの場合は、システムが自動で「欠品」と判断し、顧客へ在庫不足の通知を送信する。この際、予約販売や受注生産の仕組みがある場合は、顧客に納期情報を案内するなど、適切なフォローが求められる。

在庫確認の精度が低いと、注文後に「在庫切れ」と判明するケースが増え、顧客満足度の低下やキャンセル率の増加につながる。そのため、在庫データのリアルタイム更新や、システム間のデータ連携の正確性を担保することが、円滑なEC運営において非常に重要となる。
 

出荷指示

在庫の確保が完了すると、次のステップは出荷指示である。ECサイトの運営形態や配送パターンによって、このプロセスは大きく異なるが、基本的には「どの倉庫や出店者から、どの商品を、いつ、どの配送方法で出荷するか」を決定し、関係者へ通知する役割を担う。

倉庫在庫の場合、出荷指示は倉庫管理システム(WMS)へ送信され、ピッキングリストや梱包指示が自動で生成される。これにより、作業者は効率的に商品の準備を進めることができる。一方、直送モデルでは、出店者やメーカーに出荷依頼を行い、各拠点での出荷準備が開始される。

予約販売や受注生産の場合は、事前に設定された出荷スケジュールに基づき、発売日や生産完了のタイミングに合わせて出荷指示が行われる。BOPIS(店頭受取)の場合は、最寄りの店舗へ在庫を確保し、顧客が来店するまで準備を進めることになる。

出荷指示の正確性が低いと、誤配送や遅延の原因となり、顧客満足度の低下につながる。そのため、システム開発においては、リアルタイムの在庫連携や配送ステータスの可視化、誤出荷防止の仕組み(バーコードスキャンなど)を要件として盛り込むことが重要となる。

梱包作業と配送準備

出荷指示が発信されると、次に行われるのが梱包作業と配送準備である。このプロセスでは、商品を適切に包装し、配送に必要なラベルや伝票を貼付することで、スムーズな配送を実現する。

梱包作業は、商品の種類や配送方法によって異なる。壊れやすい商品であれば、緩衝材を使用して破損を防ぐ必要があり、食品などの温度管理が必要な商品は、保冷剤や専用の箱を利用する。さらに、環境意識の高まりに伴い、最近では過剰包装を避け、エコ素材を用いた梱包が求められるケースも増えている。

配送準備の重要な要素の一つに、配送伝票やバーコードの管理がある。倉庫管理システム(WMS)と連携し、システム上で自動的にラベルを発行することで、手作業による誤配送を防ぐ。ECサイトによっては、配送業者のAPIと連携し、リアルタイムで配送ステータスを更新する仕組みを導入することも一般的だ。

また、BOPIS(店頭受取)の場合は、通常の配送とは異なり、顧客が指定した店舗でスムーズに受け取れるよう、店舗スタッフが商品を確保し、受取準備完了の通知を送信する。

この段階でのミスは、配送遅延や誤配送、クレームの発生につながるため、梱包基準の統一や作業手順の標準化、バーコードスキャンによるチェック体制の強化などが重要となる。システム開発の要件定義においても、これらの業務を効率化するための仕組みを検討し、最適な運用プロセスを設計することが求められる。  

配送パターン/商品パターによる特徴

 

倉庫在庫

倉庫在庫方式は、ECサイトが自社で在庫を管理し、受注後に倉庫から商品を出荷するモデルである。商品の在庫を一元管理できるため、在庫精度の向上や出荷スピードの最適化が可能となる。

注文が確定すると、倉庫管理システム(WMS)が在庫を引き当て、ピッキングリストを作成する。倉庫作業員は指示に従い、商品を棚から取り出し、梱包作業を行う。その後、配送伝票を発行し、出荷準備を完了させる。

倉庫在庫方式の利点は、在庫情報をリアルタイムで管理できることと、大量の商品を効率的に処理できる点にある。一方で、保管コストや運営コストが発生するため、適正な在庫管理が求められる。また、配送センターの混雑や繁忙期の処理能力にも配慮し、システムによる最適化が必要となる。  

直送

直送方式は、ECサイトが商品を在庫として保有せず、出店者やメーカーから直接顧客へ発送するモデルである。在庫を持たないため、保管コストを削減でき、幅広い商品を取り扱うことが可能となる。

注文が確定すると、ECサイトは出店者またはメーカーに出荷指示を送信する。出店者側の在庫が確認されると、ピッキング・梱包が行われ、配送業者へ引き渡される。発送後、配送情報がECサイトに共有され、顧客へ通知が送られる。

直送の利点は、在庫リスクがなく、スピーディーな配送が可能な点にある。一方で、在庫状況や出荷作業の品質管理がECサイト側で直接行えないため、システム間のリアルタイムなデータ連携や出店者との調整が重要となる。  

予約販売/受注販売

予約販売と受注販売は、注文を受けた後に商品を確保または生産し、一定の期間を経て出荷する販売方式である。事前に需要を把握できるため、無駄な在庫を持たずに販売できる点が特徴である。

予約販売では、発売前の商品を先行受付し、発売日以降に出荷する。受注販売では、注文確定後に生産を開始し、完成次第出荷する流れとなる。どちらの方式も、注文受付時点で顧客に納期を通知し、適切なスケジュール管理が求められる。

この方式の利点は、在庫リスクを抑えつつ、効率的に生産・販売ができる点にある。一方で、納期の遅れが発生すると顧客満足度に影響を与えるため、供給計画の精度向上や定期的な進捗管理が重要となる。

BOPIS(店頭受取)

BOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)は、顧客がオンラインで注文し、指定した実店舗で商品を受け取る販売方式である。配送コストを削減でき、顧客は好きなタイミングで受け取れるため、利便性が高い。

注文が確定すると、ECサイトは最寄りの店舗の在庫を確認し、確保できた場合は店舗スタッフへ準備指示を送る。商品が準備完了すると、顧客へ受取可能通知が送信される。顧客は指定の店舗に訪れ、注文番号やQRコードを提示し、商品を受け取る。

業務フロー上は、倉庫在庫を店頭に持っていくオペレーションになっているが、オンラインと店舗の在庫データをリアルタイムで同期させる仕組みにしたほうが効率的であり、在庫管理の精度や店舗スタッフのオペレーションが成功の鍵となる。   

まとめ

EC市場の進化に伴い、受注から出荷までのプロセスは多様化し、それぞれの運用方法に応じた最適な業務フローの設計が求められている。本稿では、倉庫在庫、直送、予約販売、BOPISという主要な配送パターンについて、その特性と利点、業務の流れを整理した。

倉庫在庫は在庫の一元管理と大量出荷に適しているが、保管コストが発生する。一方、直送は在庫リスクを削減できるが、出店者やメーカーとのデータ連携が不可欠となる。予約販売や受注販売は、事前の需要予測をもとに効率的な販売が可能な反面、納期管理の精度が重要となる。BOPISは即日受取が可能で利便性が高いが、店舗在庫とオンライン在庫の同期が課題となる。

いずれの方式も、システムの最適化と正確なデータ管理が業務効率の向上と顧客満足度の維持に不可欠である。今後のEC運営においては、各業務プロセスの特性を理解し、適切な要件定義を行うことで、より効果的な販売戦略を構築することが求められる。